決議・声明・意見書
特定秘密保護法案に反対する声明

 政府は、今臨時国会において、特定秘密の保護に関する法律案(以下「法案」という。)の成立を目指している。
 当会は、昨年3月30日、従前の「秘密保全法制」について、憲法上の基本原理である国民主権や罪刑法定主義に反し、かつ、憲法上の重要な権利である国民の知る権利や公正な公開裁判を受ける権利などを侵害する危険性が大きいものとして、その制定に反対する声明を発したが、法案は、以下のとおり、依然としてこれら重大な問題を抱えたままであり、強く反対せざるを得ない。

 法案は、特定秘密の対象を「防衛」「外交」「特定有害活動の防止」「テロリズムの防止」に関する事項の4分野とするが、その範囲は広範で、内容も曖昧・不明確である。その上、何が特定秘密に該当するかの指定権者を当該情報を取り扱う行政機関の長とする一方、公正な立場の第三者がチェックする制度は存在しない。このため、本来国民に公開されるべき情報が、行政機関の恣意的な判断・運用によって特定秘密に指定され、隠蔽される危険がある。そして、指定期間の更新・延長に実質上歯止めがないことから、こうした情報が永久に国民の目から覆い隠されるおそれがある。
 このように、法案は、国民の知る権利を侵害し、ひいては国民主権を形骸化させる危険性の大きいものである。

 法案は、国政に関する情報を入手する行為を広範に、かつ、重罰をもって処罰する。すなわち、法案は、故意による漏えい行為に限定せず、過失による漏えい行為、漏えい行為の未遂、共謀、教唆及び扇動をも罰するものとする。更に、「特定秘密を保有する者の管理を害する行為」により特定秘密を取得した者を処罰対象とし、その未遂、共謀、教唆及び扇動も処罰の対象に含めている。このように処罰対象が広範であるため、通常の取材行為すら処罰の対象になりかねず、加えて最高刑が10年の懲役刑と重いことから、取材行為を萎縮させる効果は著しく大きい。
 このように、法案は、報道・取材の自由及び国民の知る権利を侵害する危険性の大きいものである。
 また、特定秘密の対象が曖昧・不明確であるため、処罰対象となる行為が不明確であり、罪刑法定主義に反するおそれもある。
 さらに、国会議員も処罰の対象となっている。したがって、特定秘密を知った国会議員がその内容に問題があると考え、他の国会議員や秘書に相談しようとした場合でも処罰されてしまう。そうだとすると、国会議員は十分な活動が出来ず、国民の意思を代表した議会が公開の討論を通じて、国政の基本方針を決定するという議会制民主主義が形骸化し、ひいては三権分立が侵害される。

 法案は、特定秘密情報を取り扱うにふさわしい職員を判別するために「適性評価制度」を導入する。この制度は、当該職員の飲酒の節度、経済的信用状況、精神疾患等の個人のプライバシーに関する情報を広範に収集することを認めている。加えて、家族や同居人の氏名、生年月日、国籍及び住所という人定調査をも許容するものとなっている。
 このように、法案は、関係者のプライバシーを過度に侵害する危険性の大きいものである。

 法案は、裁判手続について触れていないが、起訴の段階から審理・判決に至るまで、当該情報の具体的内容が、その保護を理由に明らかにされないおそれがある。この場合、被告人及び弁護人が公開の公判廷で起訴事実が特定秘密に該当するのかを具体的・実質的に争うことができないおそれや、弁護人が独自に調査や証拠収集活動をすることすらも規制されるおそれがある。
 このように、法案は、公正な公開裁判を受ける権利を侵害する危険性を有する。
 当会は、このような重大な問題のある法案に断固反対するものである。

2013(平成25)年11月18日
長崎県弁護士会   
会長 梅本國和