決議・声明・意見書

   当会は、裁判員制度が、国民の司法参加の理念のもとに、民主的裁判の実現を目指して導入されるものであることに鑑み、2004年(平成16年)通常国会に同制度にかかる法案が上程されるに当たって、以下のとおり要望する。
1.
裁判官は1人又は2人、裁判員の数は裁判官の3倍以上とするなどできるだけ多くして、国民が主体的・実質的に関与できる制度にすべきである。

 

2.
裁判員にわかりやすい制度とすべきである。捜査機関の取り調べで作成された供述調書の信用性等を判断しやすいよう、取り調べ状況の可視化(録画・録音)を導入すべきである。
3.
健全な批判がないところに健全な発展はない。裁判員が任務を終えた後は、職務上知り得た秘密及び自己以外の発言者と発言内容が特定できる事項を除いては、その経験を自由に述べることを容認すべきである。これを制限したり、守秘義務違反に刑罰を科したりすべきではない。

 

2003年(平成15年)12月25日
長崎県弁護士会   
会長 吉田良尚



 現在,司法修習生の給費制については,財務省の財政制度等審議会及び司法制度改革推進本部の法曹養成検討会において,厳しい財政難等を理由に,これを廃止あるいは貸与制に切り替えるとの方向での検討がなされている。しかしながら,当会は下記の理由からこれに強く反対するものである。
 法曹養成制度は,国民の権利擁護,法の支配の実現にかかわる専門家を養成するための制度であることから,国及び社会にとって極めて公共性・公益性の高い重要事項である。そして,このことは,裁判官あるいは検察官の養成に限らず,弁護士の養成の場合にも,弁護士が,国選弁護・当番弁護士・法律扶助・各種法律相談・各種委員会活動等,公共性及び公益性の高い活動を継続的に実行する担い手であることから等しくあてはまることである。したがって,法曹養成とりわけ司法修習に対しては,可能な限り国費が投入されるべきである。
 現行制度上,司法修習生は,職務上秘密を知り得る立場にあり,また,間接的にではあるにせよ司法作用に影響を及ぼし得る立場にあることから,公務員に準ずる身分を保証され国から給与を支給されているものである。そして,その反面,司法修習生には,他の職業に就いて収入を得る道を閉ざし,修習に専念すべき義務を課せられているのであるが,ここで,修習専念義務を課したまま司法修習生への給費制を廃止することは,公平の理念に反するものであり,質の高い法曹を養成するという新しい法曹養成制度の目的にも反するものである。
 加えて,新しい法曹養成制度のもとでは,司法修習生となる前に法科大学院に2年ないし3年在学することから,その間にも多額の学費や生活費が必要であるが,この経済的支援策も不十分な中に,さらに司法修習生に対しても給費制を廃止することは,法曹を目指す者達にとって経済的負担を一層増大させるものであり,ひいては,経済的に余裕のない者をして,法曹の道を断念せざるを得ない状況に追い込んでしまう可能性も否定できない。かくては,法曹界は,多種多様な人材が求められるにもかかわらず,経済的な事情によって富裕層のみからの偏った人材しか供給されなくなる。このようなことは断じて避けるべきことである。
 なお,給費制を廃止し貸与制に切り替えたうえで任官者についてはその返済を免除するという意見もあるが,これは任官者のみに事実上給費制を維持することを意味するものであり,法曹三者の統一・公正・平等の理念に基づく司法修習を変容させ,官民格差を生じさせるとともに,弁護士任官の推進,法曹一元化実現の阻害要因となるものであって,これもまた到底容認できるものではない。
 よって,当会は,司法修習生に対する国費による給費制を従前どおり堅持することを強く求めるものである。

 

2003年(平成15年)10月20日
長崎県弁護士会   
会長 吉田良尚



 いわゆるヤミ金融対策法(貸金業の規制等に関する法律・出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律)が本年8月1日に公布され、9月1日よりその一部が既に施行されている。
 ヤミ金融は、返済に苦しむ債務者、自己破産者等の窮状につけ込み、出資法の上限金利を大きく超える違法な貸付を行い、債務者のみならず、何ら関係のない債務者の勤務先、子どもの学校、親類、知人、隣人等に対しても脅迫電話を繰り返し、債務者らを精神的に追い込み、違法な金銭請求を行う者たちである。ヤミ金融は、かかる行為により莫大な利益を獲得し、その一部は暴力団の資金源となっていることも明らかにされる一方で、債務者らは職を失い、家族は精神的に疲弊して崩壊し、ひいては自殺に追い込まれるという深刻な被害が生じている。このことは、昨今の報道でも広く知られているところである。
 当会は、2002年10月の九州弁護士会連合会の決議を受け、「ヤミ金融の貸付は公序良俗違反で無効であるから、受けた金員は不法原因給付となり返還を要しない」という原則のもと、ヤミ金融に対して、毅然とした態度で被害救済に当たっている。改正法施行によりこの原則がより強固なものとなったことを確認すると共に、違法なヤミ金融の活動に今度こそ終止符を打つため、改めて被害の実態調査を行い、精力的に被害救済を行っていく所存である。
 また、ヤミ金融の根絶のためには、関係諸機関の協力が不可欠であることから、改正法一部施行を契機として、関係諸機関に対しては、次の要望をする次第である。
 
警察・検察に対しては、ヤミ金融について、違法な高金利契約の取締りを引続き強化すると共に、無登録業者の広告行為についても徹底的に取り締まること。
貸金業の監督官庁(財務局・都道府県)に対しては、改正法及び悪質業者についての情報が、市民により広く正確に伝わるよう広報に努めると共に、貸金業の登録を受けながら出資法等の違反を行う業者の排除に集中的に取り組むこと。
全ての新聞社、雑誌出版社及び広告・ダイレクトメール製作業者に対しては、ヤミ金融の広告の掲載及び融資勧誘のダイレクトメールの作成を中止すること。
全ての銀行等金融機関に対しては、ヤミ金融が口座を営業のために利用していると判明した場合は、当該口座の取引停止または強制解約を行うこと、及び当該口座について、ヤミ金融の被害者及びその代理人から照会があった場合は、速やかにこれに回答すること。

 

2003年(平成15年)9月17日
長崎県弁護士会   
会長 吉田良尚



 このたびの長崎市万才町における幼児誘拐殺人事件に関連して、平成15年7月11日鴻池祥肇青少年育成推進本部担当大臣が「犯罪者の親も(テレビに)映すべきだ。担任教師や親は全部出てくるべきだ。(加害者の)親なんか市中引き回しの上、打ち首にすればいい」という趣旨の発言をしたことが報道された。
 国政の中枢にあるしかも青少年問題を担当する大臣の発言とは思えない非常識な発言であり、長崎県弁護士会は同発言に対し厳重に抗議するものである。
 一般の市民感情として、少年やその親に対する怒りの声があることは理解できるが、担当大臣のかくのごとき時代錯誤の発言は、国民の、少年やその親に対する憎悪感情をいたずらに増幅させるのみであり、このたびの事件の本質のすり替えにもなりかねない。
 我々はこのたびの事件は単に少年のみの責に帰すべき個人的特殊な事件ではなく、様々な現代社会の歪みが少年に投影され、その結果惹起された事件である可能性もあるのではないかと考える。長崎県弁護士会はこの事件を契機として被害者遺族の救済を図ると同時に、事案の本質の問題性を究明し、少年の真の更生のための援助をなし、社会の病理現象に対する警鐘を鳴らしていく所存である。

 

2003年(平成15年)7月12日
長崎県弁護士会   
会長 吉田良尚



 国選弁護人の報酬額は,2000(平成12)年度から地方裁判所における標準的事件(3開廷)については金86,400円とされ,その後2年間据え置かれていた。ところが,本年度政府予算ではこれが金85,600円に引き下げられた。
 そもそも我が国においては,刑事事件の7割以上を国選弁護事件が占めており,国選弁護制度は,刑事被告人の憲法上の権利である弁護人選任権を実質的に保障する制度として機能しているというべきである。とすれば,被告人が資格を有する弁護人による十分な弁護を受けるためには,国選弁護人の活動を経済的に担保する必要がある。この点,日本弁護士連合会の試算によれば,標準的事件における適正な国選弁護人の報酬は200,000円とされている。
 しかしながら,国選弁護人の報酬は,弁護活動の内容において私選弁護人と何ら相違がないにもかかわらず,極めて低額に抑えられてきた。しかも,事前接見の日当,交通費,示談交渉のための活動費等は全く支給されず,記録謄写料も全額支給されるわけではなく,国選弁護人の負担となっているのが実情である。このような実情においては,国選弁護制度そのものが国選弁護人の負担と犠牲の上に成り立っていると言っても過言ではない。特に,小規模地方都市等においては,必然的に弁護士一人当たりが担当する国選弁護事件が多数となっており,各国選弁護人の負担と犠牲は深刻なものである。
 さらに,司法制度改革推進本部では,2006(平成18)年度から国費による被疑者弁護制度導入を前提に検討作業が進められているが,この制度の実現には,現状を大きく上回る国選弁護を担当する弁護士の確保が必要不可欠であり,そのためには国選弁護人の報酬を適正なものとすることが不可欠の前提というべきである。
 このような事態のもとで,2003(平成15)年度政府予算は,ただでさえ不十分な国選弁護人の報酬をさらに減額するというものである。これは,被告人に対する十分な弁護活動を抑制し,ひいては,被告人の弁護人選任権を侵害するとともに,国費による被疑者弁護制度の導入を阻害する要因ともなりかねないものというべきである。
 よって,当会は,本年度政府予算における国選弁護人報酬の引き下げに強く抗議するとともに,国選弁護人報酬の大幅な増額のために必要な予算措置を講じるよう強く求めるものである。

 

2003年(平成15年)6月23日
長崎県弁護士会   
会長 吉田良尚


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