決議・声明・意見書

 本年12月6日,衆議院に続いて参議院においても,特定秘密保護法案が強行採決され,同法案は成立した。
 同法案については,国民の知る権利,取材・報道の自由,関係者のプライバシー,公正な公開裁判を受ける権利等を侵害し,国民主権に反する危険性が大きい等の多くの憲法上の問題点を抱えていた。そのため,マスコミのみならず学者・文化人等多数の国民から反対ないし強い懸念の声が示され,当会も,同法案に強く反対してきた。  
 にもかかわらず,本年11月26日,同法案が衆議院において強行採決されたことから,当会は,同月29日,「特定秘密保護法案の参議院での慎重審議及び全面的白紙撤回を求める声明」を出したところである。  
 その後も,従前以上に,多数の国民から,反対ないし強い懸念の声が上げられるようになった。世論調査についても,回答者の半数以上が反対ないし慎重審議を望むという結果が出た。さらには,国内のみならず国連人権高等弁務官からも同法案に対する懸念が示されるに至った。  
 また,同法案の参議院における審議中,与党幹事長が,自身のブログにおいて,議員会館付近で同法案に反対する宣伝活動に対して,「絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わりはない」と述べ,同法案の秘密指定の対象の一つである「テロリズムの防止」が,政府・与党の考えを声高に批判する市民の表現活動にも拡大される危険性を露呈させた。後に発言は撤回されたものの,秘密指定の範囲が恣意的に拡大していく危険性が浮き彫りとされたところであった。
 したがって,参議院における同法案の審理は,慎重の上にも慎重を期すべきであった。
 そうであるにもかかわらず,政府・与党は,多数の国民の切実な声に耳を傾けず,さいたま市での地方公聴会を形だけ開いて国民の声を聞いたものとみなして,参議院においても強行採決に踏み切り,同法案を成立させた。同法案の本質的な問題点は何ら解消されなかった。与党国会議員は,国民の代表者としての職責を果たしたとは到底言えないものである。
 当会は,同法案の成立により,本来国民が知るべき情報が国民から遠ざけられ,民主主義の基盤が著しく脆弱化する社会に向かうおそれを憂慮し,このような法案を参議院で強行採決したことに強く抗議するとともに,成立したこの同法案法律を速やかに廃止することを求める。

2013(平成25)年12月6日
長崎県弁護士会   
会長 梅本國和



 2013年(平成25年)11月26日,特定秘密保護法案が強行採決され,衆議院を通過した。  
 同法案は,国民の知る権利,取材・報道の自由,適性評価制度導入に伴う関係者のプライバシー,公正な公開裁判を受ける権利等を侵害する危険性を有しており,当会をはじめとする各弁護士会,日本弁護士連合会は,反対意見を表明してきたところである。  
 また,同法案のパブリックコメントでも9万件を超えるパブリックコメントのうち約77%が反対意見であり,さらに,マスコミから一般市民に至るまで多くの反対意見が表明されている。  
 加えて,強行採決の前日の11月25日に福島県で開かれた公聴会では,出席者全員が法案の内容に反対ないし懸念を示した。
 したがって,政府としては,同法案の持つ危険性を十分認識し,それらの懸念を払拭するためにも慎重審議を行うべきであった。
 しかしながら,衆議院では,十分な審議が行われないまま,採決が強行されたものである。極めて拙速と言わなくてはならず,法案のもたらしかねない重大な影響に鑑みると到底是認できない。  
 国民主権を形骸化しかねない法案について,民意を軽視した形で採決を強行したことは,二重の意味で国民主権の基本原則に反すると言わなくてはならない。
 当会は,同法案の拙速な採決について強く抗議し,良識の府である参議院において十分な審議を尽くすよう要請するとともに,全面的白紙撤回を求めるものである。

2013(平成25)年11月29日
長崎県弁護士会   
会長 梅本國和



 政府は、今臨時国会において、特定秘密の保護に関する法律案(以下「法案」という。)の成立を目指している。
 当会は、昨年3月30日、従前の「秘密保全法制」について、憲法上の基本原理である国民主権や罪刑法定主義に反し、かつ、憲法上の重要な権利である国民の知る権利や公正な公開裁判を受ける権利などを侵害する危険性が大きいものとして、その制定に反対する声明を発したが、法案は、以下のとおり、依然としてこれら重大な問題を抱えたままであり、強く反対せざるを得ない。

 法案は、特定秘密の対象を「防衛」「外交」「特定有害活動の防止」「テロリズムの防止」に関する事項の4分野とするが、その範囲は広範で、内容も曖昧・不明確である。その上、何が特定秘密に該当するかの指定権者を当該情報を取り扱う行政機関の長とする一方、公正な立場の第三者がチェックする制度は存在しない。このため、本来国民に公開されるべき情報が、行政機関の恣意的な判断・運用によって特定秘密に指定され、隠蔽される危険がある。そして、指定期間の更新・延長に実質上歯止めがないことから、こうした情報が永久に国民の目から覆い隠されるおそれがある。
 このように、法案は、国民の知る権利を侵害し、ひいては国民主権を形骸化させる危険性の大きいものである。

 法案は、国政に関する情報を入手する行為を広範に、かつ、重罰をもって処罰する。すなわち、法案は、故意による漏えい行為に限定せず、過失による漏えい行為、漏えい行為の未遂、共謀、教唆及び扇動をも罰するものとする。更に、「特定秘密を保有する者の管理を害する行為」により特定秘密を取得した者を処罰対象とし、その未遂、共謀、教唆及び扇動も処罰の対象に含めている。このように処罰対象が広範であるため、通常の取材行為すら処罰の対象になりかねず、加えて最高刑が10年の懲役刑と重いことから、取材行為を萎縮させる効果は著しく大きい。
 このように、法案は、報道・取材の自由及び国民の知る権利を侵害する危険性の大きいものである。
 また、特定秘密の対象が曖昧・不明確であるため、処罰対象となる行為が不明確であり、罪刑法定主義に反するおそれもある。
 さらに、国会議員も処罰の対象となっている。したがって、特定秘密を知った国会議員がその内容に問題があると考え、他の国会議員や秘書に相談しようとした場合でも処罰されてしまう。そうだとすると、国会議員は十分な活動が出来ず、国民の意思を代表した議会が公開の討論を通じて、国政の基本方針を決定するという議会制民主主義が形骸化し、ひいては三権分立が侵害される。

 法案は、特定秘密情報を取り扱うにふさわしい職員を判別するために「適性評価制度」を導入する。この制度は、当該職員の飲酒の節度、経済的信用状況、精神疾患等の個人のプライバシーに関する情報を広範に収集することを認めている。加えて、家族や同居人の氏名、生年月日、国籍及び住所という人定調査をも許容するものとなっている。
 このように、法案は、関係者のプライバシーを過度に侵害する危険性の大きいものである。

 法案は、裁判手続について触れていないが、起訴の段階から審理・判決に至るまで、当該情報の具体的内容が、その保護を理由に明らかにされないおそれがある。この場合、被告人及び弁護人が公開の公判廷で起訴事実が特定秘密に該当するのかを具体的・実質的に争うことができないおそれや、弁護人が独自に調査や証拠収集活動をすることすらも規制されるおそれがある。
 このように、法案は、公正な公開裁判を受ける権利を侵害する危険性を有する。
 当会は、このような重大な問題のある法案に断固反対するものである。

2013(平成25)年11月18日
長崎県弁護士会   
会長 梅本國和



 平成24年(2012年)11月7日、ハンセン病元患者3団体は、検事総長に対して、検察官自らがいわゆる「菊池事件」について再審請求を行うよう求める要請書を、熊本地方検察庁に提出した。
  同事件は、ハンセン病患者とされた藤本松夫氏が、自分の病気を熊本県衛生課に通報した村役場職員を逆恨みし殺害した等として、昭和28年(1953年)8月29日に死刑判決の宣告を受け、同37年(1962年)9月14日に死刑執行された事件である。
 この事件においては、本来人権を守るべき責務を負っている裁判官、検察官及び弁護人という法曹三者が、ハンセン病に対する差別・偏見のため、自ら取り返しのつかない人権侵害を犯したものと言わざるを得ない。
 即ち、訴訟手続は「らい予防法」により一般社会とは隔離された国立療養所菊池恵楓園やハンセン病に罹患した受刑者のみが収容される菊池医療刑務支所に仮設された「特別法廷」において非公開で行われた。のみならず、この「特別法廷」内においては、裁判官、検察官及び弁護人のいずれもが予防衣と呼ばれる白衣を着用し、記録や証拠物等を手袋をした上で、割箸や火箸で扱った。さらに、被告人が殺人の公訴事実を一貫して否認しているにもかかわらず、第一審の弁護人は、罪状認否において「現段階では別段申し上げることはない」として争わず、検察官提出証拠には全て同意し、実質的に「弁護不在」の審理が行われた。
 このような訴訟手続が、平等な裁判(憲法第14条)、公平な裁判(憲法第37条1項)、弁護人による弁護(憲法第37条3項)、適正な刑事手続(憲法第31条)、裁判の公開(憲法第82条)を保障した憲法の規定に反し、被告人の裁判を受ける権利(憲法第32条)を侵害するものであることは明らかである。
 
 また、逮捕においては凶器を携帯しない丸腰の被疑者に銃を発砲して右腕に弾丸を貫通させ重傷を負わせ、再審請求にあっては棄却した翌日即時抗告の機会を与えることなく死刑が執行された。同事件の刑事司法手続は、捜査開始から死刑執行に至るまで全体にわたってハンセン病に対する偏見に基づき、差別的に行われており、これらは解明される必要がある。 確定判決の事実認定についても、証拠関係に照らし、幾多の問題点が存在すると指摘されてきており、必要な実験や法医学鑑定等を実施し、その問題点について、早急に司法の場で明らかにされることが必要である。
 
 憲法に違反した確定判決や合理的な疑いが残る有罪認定は、いずれも是正されなければならない。これは法治国家の責務であるが、刑事訴訟法第439条1項が、再審請求者の筆頭に検察官を挙げていることからして、公益の代表者たる検察官が、この任務を担うべきことは明白である。
 当会は、菊池事件において憲法に違反した差別的な刑事司法手続が行われており、また、確定判決に合理的な疑いがあることから、法曹三者の一員としての責任を自覚し、刑事司法が自ら誤りを正し、社会的正義を実現するために、公益の代表者たる検察官に同事件の再審請求を行うことを求めるものである。

2013(平成25)年7月24日
長崎県弁護士会   
会長 梅本國和



 法曹養成制度検討会議(以下「検討会議」という。)の第13回会議(平成25年5月30日開催)及び第14回会議(平成25年6月6日開催)において、「法曹養成制度検討会議・中間的取りまとめ」に対して寄せられた意見の概要(以下「本件意見の概要」という。)が提示された。
 しかし、本件意見の概要は、寄せられた意見の総数に加え、中間的取りまとめの各項目の「この項目に関する意見数」、「意見の例」及び「理由の例」を列挙するだけで、どのような意見が、どの程度の数寄せられたかが明らかにされていない。このような公表方法では、いかなる意見が国民の多くに支持されているのかを知ることができず、多数意見にどのような検討が加えられ、どのような考慮がなされて最終的な意見が作成されたのかを判断することが出来ない。国民の意思を政策に反映させるというパブリックコメント募集の趣旨からすれば、甚だ不十分な公開方法と言わざるを得ない。
 そこで当会は、検討会議に対し、中間的取りまとめの各項目に、どのような意見がどの程度の数寄せられたかについてのより詳細な公開を求める。

 検討会議の第13回会議において、司法修習生の経済的支援の在り方についての座長試案が提案され、第14回会議において、その座長試案に沿った法曹養成制度検討会議取りまとめ(案)(以下「取りまとめ(案)」という。)が示された。取りまとめ(案)は、貸与制を前提とした上で、司法修習生への経済的支援として、分野別実務修習の開始に当たって現住居地から実務修習地への転居を要する者について移転料を支給すること、集合修習期間中、通所圏内に住居を有しない入寮希望者が入寮できるようにすることに加え、司法修習生が収入を得ることができるように、修習専念義務の運用を緩和し、一定の範囲で兼業を認める措置を実施するとしている。
 しかしながら、貸与制を前提とした上、それから生ずる弊害につき修習専念義務を緩和し、司法修習生にアルバイトを認めることにより解消しようとする施策は極めて問題である。司法修習生は、数ヶ月のサイクルで、裁判所、検察庁、弁護士事務所での実務修習や司法研修所での集合修習を行うことになるが、それぞれが初めての職場での初めての経験であり、いずれも短期間のうちに全力を持って修習に臨み、知識・機能の習得に努めなければ、研修の実を獲得することが困難である。経済的に恵まれない司法修習生に対し、アルバイトを行うことによって司法修習時代を乗り切ることを奨励することは、国家が法曹を養成する責務を放棄することにつながりかねない。
 経済的支援策の一つとして教育活動による収入とはいえ兼業禁止を緩和することには反対する。
 中間的取りまとめに寄せられた3,119通のパブリッックコメントの内、2,421通は、法曹養成課程における経済的支援についての意見を含むものであった。法務省の説明によれば、そのうちの大多数が「給費制の復活」を求める意見であったとのことである。ところが、「意見の概要」においては、「司法修習生に対する経済的支援策については、修習資金の給費制(一部給費制を含む。)の実現を求める意見があった一方、貸与制はやむを得ないが、修習専念義務の緩和を求めるものなどが見られた。」と要約されているにすぎない。
 検討会議は、パブリックコメントに寄せられた意見をどのように受け止め、検討、考慮したかが不明である。取りまとめ案は、あくまで貸与制を前提として、パブリックコメントに寄せられた給付制復活を求める大多数の意見を全く反映していない内容であり、パブリックコメントの趣旨を明らかに没却している。

 当会は、貸与制を前提とし、修習専念義務を緩和する経済的支援策に反対するとともに、検討会議に対し、給費制の復活を含む司法修習生に対する経済的支援策を提言する「最終とりまとめ」を行うよう求める。

2013(平成25)年6月21日
長崎県弁護士会   
会長 梅本國和


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