決議・声明・意見書

  本年10月25日,長崎地方裁判所島原支部構内の駐車場において,当会所属会員が,受任している損害賠償請求事件の相手方から,弁論終了後,自車運転席に乗り込んだ際に,運転席窓ガラスを目掛けて凶器のスパナで叩きつけられ,車に損傷を与えられるといった事件が発生した。この加害者は,同会員に対してこれまでも,同会員を畏怖させるような内容の準備書面を再三提出したり,弁論終了後に同会員の車を尾行するといった脅迫行為にも及んでいた。
  新潟県においても,一昨年,受任事件の相手方が,新潟県弁護士会所属の会員及び事務員に対し監禁致傷に及んだ事件が発生しており,また,本年9月13日には,千葉県弁護士会所属会員が,受任している離婚事件の相手方である夫から刃物で重傷を負わされるという事件が発生した。
  このように,弁護士に対する業務活動に対する重大な妨害行為が続発する中で起きた今回の凶悪な事件の報に接し,強い憤りを覚えるものである。
  本件は,代理人たる弁護士の正当な業務活動に対する卑劣な攻撃であり,このような暴挙が放置されるならば,弁護士の業務は著しく制限され,ひいては国民の権利実現に重大な障害を及ぼすものである。
  しかも,今回の事件は,上記脅迫的内容の準備書面に対し,担当裁判官から当該加害者に対し,警告が発せられていたにもかかわらず,裁判所駐車場内で敢行された凶行であり,司法に対する悪質な挑戦であるといわざるを得ない。
  当会は,暴力によって目的を達しようとする理不尽な行為を決して許さないことを決意するとともに,今回の事件が,弁護士の正当な業務活動に対する攻撃であると受けとめ対応する所存である。
  弁護士に対する暴力事件再発防止のため,関係機関の厳正かつ適正な対応を求めるとともに,日弁連レベルで,会員の警戒心の喚起と適切な対応方につき,取り組みを強化されることを求めるものである。

 

2004年(平成16年)11月8日
長崎県弁護士会   
会長 國弘達夫



  日弁連は,1996年(平成8年)5月,名古屋市で開催された定期総会で「弁護士過疎・偏在問題解決のために全力をあげて取り組むことを決意する」と宣言して,新たに「日弁連ひまわり基金」制度を設置して,日弁連が長年全国で取り組んできた法律相談センターの開設を進めるとともに,いわゆる弁護士ゼロワン地域に公設事務所を開設して,国民に対するリーガルサービスを更に充実させることとした。
  その結果,2004年(平成16年)10月10日現在,133ヶ所の法律相談センターと32ヶ所の公設事務所が開設された。
  この基金による弁護士過疎・偏在対策は,若い弁護士や司法修習生の心をも引きつけ大きな成果を上げつつある。
 長崎県弁護士会においても,日弁連が上記宣言を行った1996年(平成8年)当時2ヶ所であった法律相談センターが現在では5ヶ所にまで増えており,ひまわり基金法律事務所も平成12年4月開設の九弁連対馬弁護士センターを皮切りに弁護士派遣型公設事務所2ヶ所,弁護士常駐型の公設事務所3ヶ所の合計5ヶ所が開設されるに至っている。今後も,対馬公設事務所の開設も予定されている。
  ところで,これらの弁護士過疎・偏在地域に開設された法律相談センターや公設事務所は,いずれも地域住民から大変な歓迎をもって迎えられ,地域において多大な成果を挙げているところである。
  しかしながら,「日弁連ひまわり基金」の主要な財源である特別会費(弁護士過疎・偏在対策のための特別会費)の徴収期間は2004年(平成16年)12月までとされており,万が一徴収が打ち切られれば,日弁連が取り組んできた弁護士過疎・偏在対策が極めて困難な状況に陥ることは明らかであり,そうなれば,多くの弁護士過疎地域を抱える当会においておける弁護士過疎・偏在対策が頓挫することとなってしまう。よって,ここに緊急に会長声明を行う次第である。

 

2004年(平成16年)10月13日
長崎県弁護士会   
会長 國弘達夫



  政府は,合意による弁護士報酬の敗訴者負担制度を導入するとして,本年3月2日,「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」を通常国会に提出した。しかし,継続審議となり,本年秋の臨時国会で本格審議がなされることになった。
  上記法案は,(1)裁判になったあとに,(2)原告と被告の双方に弁護士等の代理人がついている場合に限り,(3)原告と被告の間で弁護士費用に関する敗訴者負担の合意をして,(4)裁判所に共同でその旨の申立を行ったときに,(5)裁判所が弁護士費用の一部を訴訟費用として敗訴者に負担させる,とするものである。
  しかし,上記法案は,訴訟前に当事者間で私的契約として「敗訴した者は勝訴した者の弁護士報酬を負担する」との合意が成立した場合の,その合意の効力については,全く触れていない。そこで,上記法案がそのまま成立した場合には,私的契約での敗訴負担条項についても,私的自治の原則から法的効力が認められることになると判断される。もちろん,民法,消費者契約法,労働基準法等により,敗訴者負担条項を無効としうる余地はある。しかし,市民にとって,裁判に勝訴するか否か,敗訴者負担条項が無効となるかどうか等の判断は容易ではない。その結果,私的契約における敗訴者負担条項の存在は,負けたら相手方の弁護士費用まで支払わなければならないとして,訴訟提起を思いとどまらせる要因となり,市民から法的救済を受ける機会を奪う結果となる。特に,消費者,労働者などについては,深刻な問題となる。
 そこで,私的契約における敗訴者負担条項については,一律に無効とする必要がある。
  当会は,上記法案に訴訟前の敗訴者負担に関する合意が無効である旨が明示されない限り,上記法案を廃案にする必要があると考える。

 

2004年(平成16年)9月9日
長崎県弁護士会   
会長 國弘達夫



 刑事裁判において被告人自身が弁護人を依頼することができない場合には,裁判所(国)が国選弁護人を選任するが,この国選弁護人制度こそが,憲法上保障された弁護人依頼権を実質的に担保しているのである。わが国においては,多くの重大事件も含め,約75パーセント近くの事件が国選弁護人により担われているのであり,国選弁護人制度の重要性は論を待たない。
 しかるに,国は,もともと著しく低額であった国選弁護人報酬を,平成15年度・同16年度の2年連続で減額した。このような減額は,国選弁護人に選任される個々の弁護士に一層の犠牲と負担を強いるものであり,国選弁護人制度の重要性を軽視した不当な措置であると言わざるを得ない。
 この基金による弁護士過疎・偏在対策は,若い弁護士や司法修習生の心をも引きつけ大きな成果を上げつつある。
 国選弁護といえども,弁護士の職業としての活動であり,必要な費用と相当な報酬が支払われるのが当然である。また,公的弁護制度の実現等,刑事司法を抜本的に改革し,被疑者・被告人の権利を強固なものとするためにも,刑事手続をより充実化させるべきこの時期に,国選弁護人報酬を減額することは,明らかに相当性を欠くといえる。
 よって,長崎県弁護士会は,国に対し,国選弁護人報酬の増額等を求め,以下のとおり要望する。
 

国選弁護人報酬の支給基準を,第一審標準事件1件あたり,金20万円以上とし,このために必要な予算措置を講じること。
事件の難度,法廷外での準備活動,法廷内での具体的訴訟活動,出廷回数,審理期間など,弁護活動に費やされる労力の総体に応じた報酬及び日当を支給すること。
弁護活動のための記録謄写料,交通費,通信費,通訳料,翻訳料等の実費は,必ず本来の国選弁護人報酬に加算して支給すること。

 

2004年(平成16年)9月9日
長崎県弁護士会   
会長 國弘達夫



 現在、司法修習生の給費制について、国の厳しい財政状況を背景として、廃止あるいは貸与制に切り替えるとの議論がなされている。
 この問題について、当弁護士会は、昨年10月20日、司法修習生の給費制維持を求める声明を発表した。
 ところが、その後も、財務省の財政制度審議会の「平成16年度予算の編成等に関する建議」(平成15年11月26日)の中で、早期に給費制を廃止し貸与制への切り替えを行うことが提言され、さらに、法曹養成検討会(平成16年5月18日)では、仮に貸与制に移行した場合の制度設計に関して諸論点が議論され、次回6月15日の同検討会においては、大勢としては貸与制への移行に賛成という前提で、座長作成の意見整理案の検討が予定されるなど、給費制廃止の動きが強まっている。
 しかし、司法修習生の給費制は、その生活を保障することによって、修習生を修習に専念させることを目的として、現行司法修習制度と不可分一体のものとして採用されてきた極めて重要な制度である。これにより法曹資格は貧富の差を問わず広く開かれた門戸とされ、これまで多種多様な人材が、裁判官、検察官、弁護士に輩出され、社会正義の実現に大きく寄与してきたのである。
 近時の司法改革の中で、法曹資格を得るには、司法修習生となる前に法科大学院に2年ないし3年在学することが必要とされることとなり、すでに法曹となるための財政的負担は相当に増大している。
 これに加えて、さらに給費制まで廃止するならば、限られた者しか法曹となることはできず、やがて法曹は富裕層のみに偏重し、公平公正な裁判の実現にも影響を及ぼすことになりかねない。
 また、医師養成の分野において、研修医の生活を保障し、研修に専念できる環境を整えるために国費を支出するなどの動きがあるなか、司法修習生の給費制を廃止することは、こうした社会の動きに逆行し、質の高い法曹の養成を求める国民の要求にも反することとなる。
 よって、当弁護士会は、再度司法修習生に対する給費制を堅持することを強く求めるものである。

 

2004年(平成16年)6月7日
長崎県弁護士会   
会長 國弘達夫