長崎県弁護士会

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2012年(平成24年)2月28日
長崎県弁護士会常議員会決議

 

【決議事項】

当会は、わが国における人権保障を推進し、国際人権基準の実施を確保するため、2008年の国際人権規約委員会の総括所見を初めとする各条約機関からの相次ぐ勧告を踏まえ、国際人権(自由権)規約をはじめとした各人権条約に定める個人通報制度の導入及び国際連合の「国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則)」に合致した、真に政府から独立した国内人権機関の設置を、政府及び国家に対して強く求める。

 

以上の通り決議する。

 

【提案理由】

  1. 個人通報制度について

     個人通報制度とは、人権条約の人権保障条項に規定された人権が侵害されているにも拘わらず、国内での法的手続を尽くしてもなお人権救済が実現しない場合、被害者個人等が各人権条約の定める国際機関に通報し、救済を求める制度のことである。当該制度を実現するためには、個人通報制度についての定めがある選択議定書を批准する(自由権規約、女性差別撤廃条約など)、あるいは条約中の個人通報制度に関する条項につき受諾宣言を行う(人種差別撤廃条約14条、拷問禁止条約22条等)などの手続を必要とする。

     現在までにおいて、日本は上記選択議定書の批准及び条約の該当条項についての受諾宣言をしておらず、結果として個人通報制度が利用できない状況にある。かかる状況に対しては、自由権規約委員会から、1993年、1998年、2008年の3度に亘り選択議定書の批准を勧告され、その他女性差別撤廃委員会や人権理事会等からも、さまざまな場において個人通報制度の受け入れを繰り返し勧告されている。また、我が国の裁判所は、国際条約の人権保障条項の適用につき積極的であるとはいえず、人権保障条項を国内的に実現することも困難な状況であり、国際人権基準の国内実施は極めて不十分といえる。

     我が国において個人通報制度が実現すれば、被害者個人が各人権条約上の委員会に直接に見解・勧告を求めることが可能となり、個人救済の実現に資する。また、国内裁判所も、個人通報制度及び上記委員会の存在を念頭に置いて判決をすることとなり、国際的な条約解釈に目を向けざるを得ず、ひいては国内裁判による判断を国際人権基準に近づけることが可能となる。

     

  2. 国内人権機関の設置について

     国連決議及び国連人権諸機関は、国際人権条約及び憲法等で保障される人権が侵害され、その回復が求められる場合には、司法手続よりも簡便で迅速な救済を図ることができる国内人権機関を設置するよう求めており、多数の国が既にこれを設けている。そして、かかる国内人権機関を設置する場合には、1993年12月の国連総会決議「国内人権機関の地位に関する原則(以下「パリ原則」という)」に合致させる必要がある。具体的には、国内人権機関が法律に基づいて設置され、同機関の権限行使の独立性が保障され、委員及び職員の人事並びに財政等において独立性を保障されていること、調査権限及び政策提言機能を持つことが必要とされる。

     現在、我が国には法務省人権擁護局の人権擁護委員制度が存在するが、独立性等の点でパリ原則に合致するものではなく、極めて不十分な制度である。また、国連人権理事会、人権高等弁務官等の国連人権諸機関や人権諸条約機関の各政府報告書審査の際に、早期にパリ原則に合致した国内人権機関を設置すべきとの勧告がなされている状況である。

     このような状況の中で、日本弁護士連合会は、2008年11月18日に上記パリ原則を基準とした「日弁連の提案する国内人権機関の制度要綱」を発表し、さらに、法務省政務三役が2010年6月22日付「新たな人権救済機関の設置に関する中間報告」(以下「中間報告」という。)及び2011年8月2日付「新たな人権救済機関の設置について(基本方針)」(以下「基本方針」という。)を発表し、パリ原則に則った国内人権機関(以下「人権委員会」という。)の設置に向けた検討の発表が行われている。

     もっとも、上記「基本方針」においては、(1)人権委員会を法務省の外局に設置するとしている点、(2)人権委員会の委員の選任を国会同意人事とする一方で、同意を求める候補者の決定方法につき検討がなされていない点、(3)人権委員会の事務局の構成につき検討がなされていない点、(4)地方組織につき、法務省の内局である法務局・地方法務局を救済活動のアクセスポイントと位置づけており、人権委員会の独立性の観点から問題が生じうる点、及び(5)人権委員会の財政的な基盤を確立する方策につき検討がなされていない点など、未だに多くの問題点が指摘されている(2011年8月19日付日本弁護士連合会「『新たな人権救済機関の設置について(基本方針)』(法務省政務三役)に対する意見」参照)。上記問題点については、法務省政務三役が2011年12月15日に発表した「人権委員会の設置等に関する検討中の法案の概要」においても存置されたままであり、日本弁護士連合会としても、2012年1月13日付「法務省政務三役『人権委員会の設置等に関する検討中の法案の概要』に関する会長声明」により、再度問題提起を行なっているところである。

     

  3. そこで、当会は、我が国における人権保障を推進し、国際人権基準の実施を確保するために、各人権条約に定める個人通報制度を早期に導入し、パリ原則に合致した、真に政府から独立した国内人権機関をすみやかに設置することを、政府及び国家に対して強く求めるものである。

     

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