長崎県弁護士会

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長崎県弁護士会 会員 堀 大祐

 

 令和5年2月6日、長崎刑務所から長崎県弁護士会宛に長崎拘置支所(長崎市白鳥町)の収容業務を同年11月末に停止して、以降は長崎刑務所(諫早市小川町)に収容業務を集約する旨の通知がされました。

 長崎拘置支所は、刑事裁判中の被告人の収容施設ですが、この収容業務を長崎刑務所に移すものです。

 集約先の長崎刑務所は、地元諫早市の市街地からも交通の便が悪く、バスは1時間に1本しかありません。

 県弁護士会にとっては、事前に法務省等から何らの情報提供や協議等もない思いがけない通知でした。

 そこで、県弁護士会は、5月2日、法務省に対して、収容業務停止の撤回及び収容業務継続に向けての十分な協議を求める旨の意見書を提出しました。

 県弁護士会は、単に弁護人の接見に要する時間や費用が増えることを問題と考えているのではありません。被告人の防御権行使と再犯防止の観点から問題があると考えているのです。

 刑事裁判では、被告人には事実及び法律上の主張のみならず、反省の態度、社会復帰後どのように生活したいのかなどについて、自分の意見を述べる機会(防御権)が保障されています。憲法34条前段に由来します。

 被告人と弁護人の打ち合わせが適時かつ十分に保障されることは、被告人の防御権にとって極めて重要です。無実の罪を着せられているケースでは尚更です。また、裁判員裁判は長崎地裁本庁で連日開廷されますが、次の日の準備のため、その日の裁判終了後に被告人と弁護人とで打ち合わせを行う必要があります。法務省は収容業務停止について、事前に長崎地裁、県弁護士会と協議していないため、十分な打ち合わせの時間確保の方策が何も示されていません。

 また、身柄を拘束された人にとって、家族や友人、福祉関係者などとの面会が、社会との重要な接点となり、孤立を防ぎます。令和4年度犯罪白書によると、被告人の60%以上は、執行猶予などで刑事裁判終了後社会に戻ります。家族や福祉関係者の支援により社会復帰を円滑に進めることが再犯防止にとって非常に重要です。

 遠方に収容することでこのような面会の機会を事実上制約するという点について、法務省が今回の決定をする際に十分に検討したのか疑問があります。

 拘置支所の廃止、収容停止は、令和3年から全国的に相次いでいます。中でも長崎は県庁所在地にある拘置支所の収容停止でとりわけ影響が大きいものです。いずれも施設の老朽化が進み、財政的に建て替えが困難との理由です。他方で、同じく老朽化した拘置支所を建て替えているところもあります。

 この問題に関し、日本弁護士連合会は、法務大臣に対して、拘置支所の廃止や収容停止について、事前に施設所在地の弁護士会と協議を行い、同意のもとで進めるよう要望書を出しています。

 県弁護士会としては、被告人の防御権行使と再犯防止の観点から、長崎拘置支所の建て替えをすべきであるとの立場で法務省と協議を続けていきます。

 

(2023年8月7日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)

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