長崎県弁護士会

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長崎県弁護士会 会員 中鋪美香

 

 皆さん、LGBTQということばを聞いたことがありますか。性的少数者の総称です。そのうちT(トランスジェンダー)について、日本には、同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(特例法)という法律があります。この特例法は、性同一性障害を有する人が、特定の要件を満たす場合に、家庭裁判所の審判で、法令上の性別の取扱いと戸籍上の性別記載を変更できることを定めています。

 

 ところで皆さんは、「性同一性障害」の定義についてご存じですか。一言で言えば、身体の性と心の性が一致しない状態のことですが、特例法は、性同一性障害を有する者について、「生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているものをいう。」と定義しています。厳格です。

 

 そして、同法は、この性同一性障害を有する者が、家庭裁判所で性別の取り扱いの変更を認めてもらうためには、①十八歳以上であること、②現に婚姻をしていないこと、③現に未成年の子がいないこと、④生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること、⑤その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること、の5つの要件すべてを満たす必要があると定めています。

 

 令和5年10月23日、最高裁判所は、この④の要件、すなわち性別適合手術を受けることを必要とする要件について、憲法違反であるとの判断を示しました。その理由は、④の要件が、性同一性障害を有する人に、手術を受けるか戸籍上の性別変更を断念するかという過酷な二者択一を迫るもので、憲法で保障されている「意思に反して体を傷つけられない自由」を制約しているといえるからです。

 

 最高裁が、法律の規定を憲法違反と判断するのは、戦後12例目となります。最高裁が憲法違反の判断をすると、国会は法律の見直しを迫られるため、この④の要件は削除されることになるでしょう。

 

 また、女性から男性へ性別変更する場合は、ホルモン投与により⑤の要件が認められる傾向にありますが、男性から女性へ性別変更する場合は、手術をしなければ⑤の要件を満たすことができません。

 

 最高裁まで争われた上記の事案は、⑤の要件についてはまだ審理が尽くされていないとして、高等裁判所へ審理を差し戻し、現在もまだ審理中です。⑤の要件も、手術やホルモン投与という身体への侵襲・強い負担をともなう治療を必要とする点で、多くの当事者が撤廃を求めている要件です。性同一性障害を有する人が、身体への侵襲を受けることなく、より自分らしく生きられる社会となるか。高等裁判所での判断が注目されます。

 

(2024年4月7日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)

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