長崎県弁護士会

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2011年(平成23年)1月25日

 

長崎県知事 中 村 法 道  様

 

長崎県弁護士会
会長 原  章 夫

 

意見の趣旨

 

 平成22年11月13日に長崎県弁護士会が主催した地方消費者行政シンポジウムで交わされた議論を踏まえ、長崎県の消費者行政を更に充実させるため、次の措置が行われることを求める。

  1. 1 消費生活相談をより多く、より確実に受け付け、寄せられた案件を迅速かつ適切に対処できるよう、消費生活相談員を配置した相談窓口を拡充すること。

     

  2. 2 消費生活相談員が消費生活相談に迅速かつ適切に対処できるよう、研修の実施等を通じて消費生活相談員の質を向上させ、また、その待遇を改善すること。

     

  3. 3 第1項及び第2項の措置のために「住民生活に光をそそぐ交付金」を活用する等十分な予算措置を講じること。

     

意見の理由

 

  1. 第1相談窓口の拡充について
    1. 1 多額かつ多数の消費生活相談

       国民生活センターによれば、平成21年度の全国の消費生活相談全体での契約・購入金額の平均は147万円、既支払金額の平均は55万円に上る。また、長崎県全体の消費生活相談件数は、全国的に架空請求被害が多発していた平成16年度をピークとして年々減少しているものの、依然として多くの消費生活相談が寄せられており、平成21年度も12、799件を数えた。

       加えて、消費生活相談の内容が多様化、高度化し、相談処理が長期化する傾向が進んでいる。

       

    2. 2 長崎県内の消費生活相談窓口体制の現状

       平成22年8月に長崎県弁護士会が行った長崎県内の22の県市町に対するアンケート結果によれば、平成22年9月現在、2つの市町が消費者相談の専用窓口を設置しておらず、更に2つの市町が消費者相談専用窓口は設置しているが相談業務を専任で担当する消費生活相談員を配置していないと回答している。これらの4市町では、身近な場所で消費生活相談員に相談できないために、消費者被害に遭ってもそのこと自体を認識していないか、認識していても泣き寝入りしている市民が多数存在するおそれがある。

       また、平成20年度国民生活選好度調査(内閣府実施)によれば、平成19年度に消費者被害を受けたことが「ある」と回答した人の割合は回答者全体の1.8%であった。しかし、長崎県では、平成21年度の人口に占める消費生活相談者の割合は約0.9%にとどまっており(長崎県調べ)、多くの市民が消費者被害に遭っても消費生活相談を受けることなく泣き寝入りしているおそれがある。

       

    3. 3 消費生活相談窓口拡充の必要性

       消費者被害に遭った市民を泣き寝入りさせないためには、まずは身近な市町で、その声をできる限り受け止め、適切に対応できる体制を充実させることが不可欠である。

       この点に関して、平成20年度版国民生活白書は、「消費生活相談員の数」と相談件数の間には相関関係があることを指摘している。そして、消費者庁は、「地方消費者行政の充実・強化のためのプラン」を策定し、消費者に身近な相談窓口の充実が不可欠であり喫緊の課題であるとして、相談窓口を設置していない市町村に対し「相談窓口の設置」等を求め、相談窓口を設置している市町村に対しても、「消費生活相談員の配置、増員」等を期待するとしている。

       そこで、長崎県弁護士会は、消費生活相談窓口未設置ないし消費生活相談員未配置の市町に対しては、その設置ないし配置を求め、既設置かつ既配置の市町に対しては、消費生活相談員の増員等相談窓口のさらなる拡充を求める。

       

  2. 第2消費生活相談員の待遇改善及び質の向上について
    1. 1 質の向上

       消費者相談を適切かつ迅速に処理するためには消費生活相談員が専門的知見を向上させることが重要であることはいうまでもない。ところが、平成22年8月から9月にかけて、長崎県弁護士会が行った長崎県内の消費生活相談員に対するアンケート(以下「相談員アンケート」という)では、消費生活相談員は、各自治体から提供される研修等が不十分なため、自らの費用と時間をもって、弁護士や司法書士との勉強会へ参加したり、専門誌や書籍を購入する等専門的知見の獲得に励んでいる状況にある。

       しかしながら、消費生活相談員が専門的知見を獲得したその恩恵は行政、ひいては市民が享受するものである。それゆえ、行政は、専門的知見の獲得を消費生活相談員個々人の努力や費用、時間に委ねるべきではなく、それが行政の役割であるということを認識し、消費生活相談員に対する研修の機会を積極的に設けるべきである。

       そこで、長崎県弁護士会は、長期的かつ具体的な消費生活相談員養成計画を策定する等し、消費生活相談員の業務の一環としての研修制度及び研修派遣制度を設けることを求める。

       

    2. 2 待遇改善

       地方自治体は、消費生活に関する苦情相談が専門的知見に基づいて適切かつ迅速に処理されるよう、苦情のあっせん処理に努めるべきもの(消費者基本法19条)とされているが、そのための専門的知見の獲得には当然に時間と費用を要するものである。

       しかし、消費生活相談員は、そのほとんどが1年ごとに契約更新がされる非正規職員という不安定な地位にあり、相談員アンケートでは、不安定な地位や給与が低額で昇級や手当もないという恵まれない条件に不安と不満の声が寄せられた。

       このように不安定な地位では、消費生活相談員は、職務に専念できず、専門的知見の獲得にも積極的になることができないため、消費者相談の質の向上に支障となる。また、いつ雇い止めされ職を失うか分からないことから、せっかく専門的な試験を受けて相談員資格を取得しても、職業として消費生活相談員を選択することが困難な実情もある。このような現状では、専門家としての消費生活相談員を継続的に確保することができない。

       消費者が安全・安心な生活をおくるためには、消費者トラブルの予防及び消費者トラブルからの迅速かつ適切な救済がなされなければならない。そのためには専門家としての消費生活相談員を確保することが必要であり、消費生活相談員の質の向上及び人材の継続的確保は、消費者保護のための喫緊の課題である。そこで、長崎県弁護士会は、消費生活相談員を、その業務内容に相応しい地位にするため、任期の定めのない専門職とする等待遇の改善を求める。

       

  3. 第3「住民生活に光をそそぐ交付金」の活用について

     平成22年10月に閣議決定された「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」を踏まえ、平成22年度補正予算案において3500億円の「地域活性化交付金」が計上され、そのうち1000億円は「住民生活に光をそそぐ交付金」として計上されている。

     この交付金の目的は、これまで住民生活にとって重要な分野でありながら、光が十分に当てられてこなかった分野として地方消費者行政、DV対策・自殺予防等の弱者対策・自立支援、知の地域づくりに対する地方の取組を支援することにある。そして、平成22年10月26日の片山総務大臣の記者会見では、交付金の具体的な使い道の例として、消費者相談、消費生活センター等の経費、人件費が挙げられている。

     平成21年度から平成23年度までは、国より、「地方消費者行政活性化交付金」が交付され、長崎県及び長崎県内の各市町においても、同基金をもとに消費者行政を充実化させる取り組みがなされているが、前記第1項及び第2項のとおり、相談窓口の拡充、消費生活相談員の質及び待遇の改善は、現状として十分といえない。

     現在、「消費者行政活性化基金」については、独自財源2分の1ルール(県と県内市町村の消費者行政予算の合計額の2分の1を上回らない額を限度としてしか、基金を取り崩せない)により、自由に取り崩せない状況にあるが、この「住民生活に光をそそぐ交付金」は、長崎県と県内市町の独自財源部分に充てることもできるとされている。

     「住民生活に光をそそぐ交付金」を活用すれば、より多くの消費者行政予算を確保でき、現在、長崎県と県内市町が実施している地方消費者行政の改革を一層進めることができる。

     そこで、長崎県弁護士会は、長崎県に対し、「住民生活に光をそそぐ交付金」を、相談窓口の拡充、消費生活相談員の質及び待遇の向上に積極的に活用することを求める。

 

 

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