長崎県弁護士会

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  1. 1 長崎県労働局長は、2017年(平成29年)9月6日に、長崎県の最低賃金を22円引き上げ、最低賃金時間額を737円に改正することを決定し、同決定は同年10月6日に発効されている。

      このように20円を超える最低賃金時間額引上げを行ったことは、長崎県内におけるワーキングプアの救済や、貧困問題の解消に一定程度資するものと評価しうる。

      しかしながら、労働者が最低賃金時間額737円で1か月173時間(法定労働時間週40時間とした場合の月労働時間)稼働しても、賃金額は月収12万7501円、年収153万0012円にしかならない。これは、いわゆるワーキングプアのラインとされる年収約200万円にすら遠く及ばない水準である。この金額では、労働者が賃金だけで自らの生活を維持し、将来のための貯蓄をしていくことは到底困難であり、最低賃金法第1条が目的として掲げる「労働者の生活の安定」とはほど遠い状況である。

      また、最低賃金時間額が引上げられたにせよ、長崎県における最低賃金時間額737円という水準は、全国で最も低く、最も高い東京都の958円とは221円もの開きがある。なお、平成28年度における東京都との間の差額は217円であったことから、むしろ地域間格差はますます拡大していると言える。

      地方では賃金が高い都市部での就労を求めて若者が地元を離れてしまう傾向が強く、上述のような格差は長崎県外への人口流出による労働者層の減少に拍車をかけるものであり、地域経済の活性化のためにも、最低賃金の地域間格差の縮小は喫緊の課題である。

     

  2. 2 政府は、2010年(平成22年)6月18日に閣議決定された「新成長戦略」において、最低賃金時間額の全国加重平均を2020年までに1000円とする目標を明記した。2017年(平成29年)の最低賃金時間額の全国加重平均は848円であり、今後政府目標を達成するためには1年あたり50円の引上げが必要となる。

      したがって、中央最低賃金審議会は、本年度、全国全ての地域において、少なくとも50円以上の最低賃金の引上げを答申すべきである。長崎地方最低賃金審議会においても、少なくとも50円以上の最低賃金の引上げを答申し、地域経済の健全な発展を促すとともに、労働者が十分な勤労意欲を保持しつつ就労に励み、充実した社会生活を送ることを保障すべきである。

     

  3. 3 また、現在、中央及び地方の最低賃金審議会の多くは、実質的に非公開となっており、審理の内容や経過を検証することが困難となっている。審理の適正の担保のため、また最低賃金という国民にとって重要な事項が決定される過程を広く国民に知らせるため、審議会の内容、経過は可能な限り公開が要請されるものである。

      鳥取地方最低賃金審議会においては、議事の全面公開が実現しており、何らの問題も生じていないことが、日本弁護士連合会の調査で確認されている。中央及び長崎の最低賃金審議会においても、審議の公開を積極的に推進すべきである。

     

  4. 4 以上より、当会は、政府、中央最低賃金審議会、長崎地方最低賃金審議会及び長崎労働局長に対し、国民がおしなべて健康で文化的な最低限度の生活が営むことができるよう、最低賃金の地域間格差を解消しつつ、少なくとも50円以上の、最低賃金の大幅な引上げを行うことを求める。また、審理の適正を担保するため、審議会の公開及び審議会の議事録の公開を積極的に推進することを求める。

     

2018年(平成30年)7月11日

長崎県弁護士会
会長 森 永 正 之
ひまわり相談ネット

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