長崎県弁護士会 会員 中鋪美香
今回は、家庭裁判所で行われる家事調停についてご紹介します。家事調停は、家庭内の紛争解決をサポートする制度で、夫婦間や親族間で起こる様々な問題、例えば離婚、親権、養育費、遺産分割などについて、家庭裁判所における話し合いを通じて解決を図るための法的手続きです。夫婦間の問題については離婚だけではなく夫婦関係を円満に調整するという調停もあります。
調停手続では、裁判官1名と調停委員2名からなる調停委員会が事件を担当します。裁判官は話し合いの席に常駐しているわけではありませんが、要所要所で進行について調停員と評議を行います。また、調停の大事な場面で裁判官が調停に同席し、当事者と直接話をすることもあります。このようして、調停委員会は公平中立な立場で当事者双方の意見を聞きながら、合意形成を支援します。
調停委員の職業は多様ですが、例えば弁護士などの専門職のほか、元公務員、会社役員、自営業者や主婦など、幅広い分野から選ばれています。多くの場合、男女各1名が調停を担当し、異なる視点から当事者の話を聞き、より多角的に問題解決にあたります。調停委員は、法律の専門家ではない社会常識や人生経験に基づいた柔軟な視点を提供し、感情的になりがちな紛争を冷静に導く役割を果たします。
家事調停の大きな特徴とメリットは、手続きが非公開で行われるためプライバシーが守られ、当事者が顔を合わせることなく交互に意見を述べられる点にあります。また、法律の厳格な適用ではなく、調停委員や裁判官のサポートのもと、当事者双方の具体的な事情や意向を最大限に尊重した柔軟で現実的な解決を目指せるため、当事者が納得しやすい形で紛争を終結させることができます。調停が成立し、その内容が調停調書に記載されると、その調書は確定判決と同じ法的効力を持ち、将来的な不払いなどの問題が発生した場合に調停調書で強制執行をすることができます。
調停は通常、申立てから約1カ月から1カ月半後に第1回期日が指定され、月に1回程度のペースで話し合いが重ねられます。現在は、電話やWEBによる調停も可能になったため、管轄の裁判所が遠方でも調停期日に出席することができます。
裁判所の手続と聞くと、敷居が高く、怖いイメージを持たれる方も多いと思います。しかし、調停はあくまで話し合いの場であり、当事者同士では話がつかなかったことも、間に調停委員という緩衝材が入ることで、話が円滑にまとまることが多くあります。
皆さんも、もし家庭内で紛争が生じ、なかなか当事者同士で解決が難しい場合には、家庭裁判所での家事調停での解決をぜひ検討してみてください。
(2026年1月18日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)













