長崎県弁護士会

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長崎県弁護士会 会員 今井 一成

 

 皆さん,長崎県が特定複合観光施設(IR)を佐世保市に誘致しようとしていることをご存知ですか。IRと言われてピンと来なくても,ハウステンボスにカジノができるかもしれないという話は聞いたことがありますね。ここでいうIRとは,簡単に言えば「カジノを含むさまざまな観光施設の複合体」のことです。
 さて,観光施設の複合体自体は,もともと日本各地に存在していました。例えば,ハウステンボスも,テーマパークとホテル等が一体的に設置されているという意味では複合観光施設です。しかし,2018年成立の法律で新たに設置が認められたIRは,カジノを設置できる点で従来の観光施設と大きく異なります。そもそもカジノは賭博そのものですから,日本では刑法で禁止されてきました。それを解禁するのがIRなのです。
 それでは,なぜ長崎県はIRを誘致しようとしているのでしょうか。長崎県の一番の狙いは経済効果です。実際に行ったことがなくても,ラスベガスと聞けば,きらびやかな街をイメージされるのではないでしょうか。また,アジア圏では,マカオやシンガポールもよく知られています。ラスベガスには世界中から大勢の観光客が訪れ,ホテル等では大勢の人々が働いています。このように,カジノを持つIRが成功すれば,大きな経済効果を期待できます。
 しかしながら,当たり前ですが,カジノをつくれば必ずもうかるというものではありません。まず,政府は国内3カ所にIRを認めるとしています。現在,神奈川県(横浜市)や大阪府もIR誘致に積極的です。長崎県がIRを誘致できたとしても,横浜や大阪等との国内競争に勝たなければなりません。また,IRは海外からの観光客を呼び込むことを目指しています。そうすると,ラスベガスやマカオ,シンガポールとも競争して勝たなければなりません。
 仮に競争に負けてしまった場合はどうなるのでしょうか。例えば,韓国の江原道(カンウオンド)では,カジノを設置したものの,見込んでいた海外客を誘致できなかったため,ギャンブル依存症患者と質屋が増える一方で,経済効果が上がらなかったという現実があります。米国のアトランティックシティーでは,カジノの閉鎖が相次いだ結果,失業率が上昇するとともに,大きく税収が減少してしまったそうです。
 このように,IRを誘致すること自体がその地域にとって「ギャンブル」なのです。そのため,IR誘致に賛成するにせよ反対するにせよ,私たちは10年先,100年先を見据えて考えておく必要があります。長崎県弁護士会は,11月16日午後2時より,佐世保市中部地区公民館にて,カジノ誘致に関するシンポジウムを開催します。入場無料ですので,長崎県と佐世保市の将来について,私たちと一緒に考えてみませんか。

 

(2019年11月10日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)

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