長崎県弁護士会

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長崎県弁護士会 会員 森永 正之

 

 改正新型インフルエンザ等対策特別措置法による緊急事態宣言が出され,対象地域が全国に拡大されました。長崎県でも感染者は増えています。この法律の私たちの生活への影響について考えてみたいと思います。
 新型コロナ特措法とも呼ばれる,この法律の目的は,新型コロナウイルスを時限的に含む新型インフルエンザ等の発生時において国民の生命及び健康を保護し,国民生活及び国民経済に及ぼす影響を最小にすることです。
 この目的を達成するため,今回,安倍晋三首相が緊急事態宣言を出しました。これを受け,各都道府県知事は,ウイルスのまん延を防止する手段として,一定の期間と区域を指定し,外出自粛要請,学校や興行場所等の一定施設の利用の制限や停止の要請を行っています。緊急事態宣言が出る前から外出自粛要請等は出ていましたが,緊急事態宣言が出たことで法律的な裏付けを持つことになりました。
 ただ,これは要請ですので,法律上強制力を持つものではありません。知事は,施設の利用制限等の指示もできますが,罰則を伴う強制はできません。これは,外出や学校等の施設利用が,移動の自由,子どもの学習権,営業の自由といった法律より上位にある憲法上の権利と関連し,これと抵触する恐れがあるからです。
 もし,今後罰則を導入するという法律改正の議論になった場合には,本来行使できる憲法上の権利の強力な制約となりますから,より慎重に議論する必要があります。
 また,知事は,医療等の提供体制を確保する手段として,土地や建物の所有者の同意がなくても,当該土地や建物を使用でき,また,一定の物資について,所有者の同意なく収用ができるようになります。
 報道等で言われる私権の制限とは,憲法上認められた財産権を強制的に取り上げることです。後日損失補償があるとはいえ,本来自由に使えるはずの自分の財産を使えなくなるのですから,強力な制限となります。
 最近,なんとなく息苦しいと感じるのは,普段は空気のように当然と思っている憲法上の権利が非常事態で制約され,クローズアップされるからです。他方で,私たちの誰もが,新型コロナウイルスを「うつさない・うつらない」よう行動せざるを得ないのも事実です。
 法律は,私たちの生活に密接に関わるものです。無関心でいられても無関係ではいられません。私たち市民も特措法がどのように適用,運用,あるいは改正されようとしているのか関心を持つ必要があります。

 

(2020年4月30日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)

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