長崎県弁護士会

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長崎県弁護士会 会員 中川 拓

 

 同じ会社の中で、正社員として働くAさんと、契約期間1年の契約社員のBさんがいます。仕事の内容は同じです。
 正社員のAさんは基本給に、いろんな手当がついています。ボーナスも支払われます。辞める時の退職金もあります。病気になったら休める病気休暇の制度もあります。外回りで社用車を使うこともできます。
 契約社員のBさんには手当はありません。ボーナスもありません。退職金もありません。病気休暇もありません。社用車も使わせてもらえません。基本給自体、Aさんよりかなり低いです。
 Bさんから「同じ仕事をしているのに、Aさんとの差に不満がある」と相談された上司のあなたはどのように答えますか。
 「契約社員の待遇は、入社時に説明している。待遇をわかって入社したのだから、不満に思うのはおかしい」。こう考える人もいるでしょう。でも、就職は個人の努力ではどうにもならない部分があります。小さい子供がいる、病気がある、年齢が高い―など。不景気などの事情でなかなか正社員の口が見つからない人もいます。全員を「自己責任」で片付けてよいのでしょうか。
 「正社員はこの先長く会社で働くけど、契約社員はいつ切られて、いなくなるか分からないから、ある程度の待遇で我慢すべき」。こう言う人もいるかもしれません。ですが、契約社員なら自由に契約を切ってよいというわけではありませんし、そのまま長く働く人もいます。むしろBさんの方が、立場が不安定な分、高い給料をもらってよい―という考えもできます。
 普通の人は生活をしていくため、他に方法がないから、就職し、働いて給料をもらいます。それは正社員も契約社員も同じです。それなのに「契約が違う」というだけで、給料や待遇にこんなに差があって、Bさんは将来への希望や仕事への誇りを持てるでしょうか。正社員とそれ以外の人たちの間で分断が進んで、良い社会になるでしょうか。
 欧米には「同一労働同一賃金」という考え方があり、日本の法律にも徐々に取り入れられつつあります。今年4月から中小企業にも全面適用される改正「パート・有期労働法」はこの方向性を強めました。
 簡単に言うと、①契約社員、パート、アルバイト、嘱託、非常勤などの社員と、正社員との間で不合理な待遇の差別をしてはいけない(均衡待遇)②そうした社員と正社員とで、もし仕事の内容や転勤、責任の範囲が同じ場合は、同じ待遇にしないといけない(均等待遇)③労働者が格差の説明を求めたら、会社は説明しないといけない(説明義務)―という内容です。
 皆さんの職場はどうですか。

 

(2021年2月21日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)

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