長崎県弁護士会

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 最低賃金の引上げが必要であること
 長崎労働局長は、長崎地方最低賃金審議会の答申を受けて、2021年(令和3年)9月2日、長崎県の地域別最低賃金を前年より28円引き上げ、821円とすることを決定した。これは、長崎県内における貧困問題の解消に一定程度資するものであったと評価しうる。
 しかしながら、ウクライナ情勢、円安、エネルギー価格・原材料コストの上昇等により物価は上昇し(2022年(令和4年)6月の消費者物価上昇率《総合》は前年同月比2.4%の上昇)、労働者の生活基盤は不安定な状況に置かれている。
 実際に、長期に及ぶ新型コロナウイルスの感染まん延を背景として、労働者の収入は減少している。2021年(令和3年)10月の公益財団法人連合総合生活開発研究所の調査によれば、1年前と比較した世帯収入について、「かなり増えた」又は「やや増えた」と回答した者が16.6%であったのに対し、「やや減った」又は「かなり減った」と回答した者は30.7%に及んでいる。
 このような状況下で、経済を活性化し、労働者の健康で文化的な生活を確保するためには、これまで以上の最低賃金額の引上げが必要である。

 

 地域間格差は改善されるべきこと
 最低賃金の地域間格差は依然として大きく、格差が改善されていないことは問題である。
 最低賃金の高低と人口の転入出には強い相関関係があるとされる。2021年(令和3年)の長崎県の最低賃金は時給821円であるが、これは、最も低い高知県と沖縄県の時給820円と同水準である。最も高い東京都の時給1041円と比較すると、220円もの開きがあり、その格差は大きい。
 そして、2021年(令和3年)の長崎県異動人口調査結果によれば、若年層の転出超過は顕著であり、その上、出生数も減少している。生産年齢人口の減少に起因する労働供給不足は、地域経済停滞の要因であるから、このような状況が続けば、格差は縮まるどころか、むしろ拡大する一方である。
 地域別最低賃金における地域間格差は、改善されなければならない。

 

 全国一律最低賃金を実現すべきこと
 中央最低賃金審議会は、地域別最低賃金引上額の目安を答申するに当たって、全国をA~Dの4つに区分しており、従前はそれぞれの引上額の目安に差を設けていたが、過去2年は、全ての地域に一律の目安額を答申するに至っている。最近の調査(2021連合リビングウェイジ報告書)によれば、労働者の生計費は都市部と地方の間でほとんど差がないとされているため、そのような実態を反映したものと評価できる。
 そうであれば、地域間格差の拡大をもたらす目安制度は、もはや機能不全に陥っており、中央最低賃金審議会は、目安制度に変わる抜本的改正策として、全国一律最低賃金制の実施に向けた提言をなすべきである。

 

 まとめ
 よって、当会は、中央最低賃金審議会に対して、地域別最低賃金額の目安を引き上げる答申を行うこと、全国一律最低賃金制の実施に向けた提言を行うことをそれぞれ求め、長崎地方最低賃金審議会に対しては、最低賃金の引上げの答申を行うことを求める。

 

2022年(令和4年)7月25日
長崎県弁護士会   
会長 濵 口 純 吾

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