長崎県弁護士会

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長崎県弁護士会 会員 木村  曜

 

 

 18歳の皆さん、成人年齢の引き下げ等に伴い、裁判員候補者の年齢も18歳以上となりました。皆さんも、来月には裁判所から裁判員候補者名簿に掲載されたとの通知が届き、来年には裁判員になるかもしれません。

 裁判員制度は、国民の皆さんが裁判員として刑事裁判に参加し、被告人が有罪か無罪か、有罪の場合どのような刑にするかを裁判官と一緒に決める制度です。裁判員裁判制度の対象となる事件は、殺人罪や強盗致死傷罪といった重大事件です。

 裁判員候補者名簿に登録された場合、登録されたことの通知と調査票が届きます。調査票の回答で、辞退理由等が認められる人は、裁判所に呼ばれることはありません。学生や生徒の皆さんは辞退することも可能です。
裁判員は、事件ごとに呼び出され、最終的には「くじ」で6人が選ばれます。

 裁判員に選ばれた場合、法廷の壇上の席に座り、公判手続きに参加します。公判手続きは、連日開かれ、集中審理が行われます。裁判官、検察官、弁護人は、公判手続きに先立ち、公判前整理手続を行い、争点を整理し審理の予定を立てておきます。

 裁判では、はじめに検察官が罪となるべき事実を朗読し(起訴状朗読)、次に被告人が事実を認めるのか、争うのか等の意見を述べます(罪状認否)。その後、検察官と弁護人双方が、それぞれ思い描く事件のストーリーを裁判員に説明します(冒頭陳述)。そして、証拠の説明があり、証人や被告人に対する質問が行われます(証拠調べ)。裁判員から証人や被告人に直接質問することもできますし、裁判官を通じて質問することもできます。

 審理の終わりに、検察官や弁護人は、意見を述べます。検察官の意見を「論告」、弁護人の意見を「弁論」といいます。私たち弁護人は、被告人の主張を分かりやすく伝えることを意識しています。

 審理が終わったら、被告人が有罪か無罪か(被告人が犯罪を行ったことにつき「合理的な疑問を残さない程度の証明」がなされたかどうか)、有罪だとするとどんな刑にすべきかを裁判官と一緒に議論し、決定します(評議)。議論を尽くしても、全員の意見が合わない場合、多数決が行われます。この場合、裁判官の1人以上が多数意見に賛成していることが必要です。

 18歳の皆さんには、若い世代の視点で意見を出すことが期待されます。裁判員の意見は、裁判官と同じ重みを持ちますので、負担を感じる人も多いでしょう。しかし、どのような結論を取ったとしても、一人で決めるのではありません。6人の裁判員と3人の裁判官がさまざまな意見を出し合った上での結論ですので、安心して意見を出して、刑事裁判に参加してもらいたいです。

(2022年10月8日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)