長崎県弁護士会

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長崎県弁護士会 会員 増﨑勇太

 

 1月26日付の長崎新聞で、人工知能(AI)が弁護士業務をすることが弁護士法に抵触するのかについて検討した投稿記事を読みました。投稿者は高校生のようですが、非常に素晴らしい着眼点だと思います。
 弁護士法が禁止する「非弁行為」とは、弁護士以外の者が報酬を得る目的で法律事務を業として取り扱うことを指します(司法書士など他の資格に基づくものを除く)。
 かつては、資格がないにもかかわらず訴訟を取り扱う者がおり、「三百代言」などと呼ばれていました。そのような法律知識が不十分な者による訴訟行為が横行すれば、人々が正当な法的権利を行使する機会を失わせることになります。そこで弁護士法は、無資格者が法律事務を業として行うことを禁止しているのです。
 では、AIが法律事務を行うことは非弁行為に当たるのでしょうか。
 まず前提として、人間の関与なく全自動で法律事務を行う「ロボット弁護士」といえるようなAIは現時点では存在しないと思われます。現在問題となっているのは、法律業務をサポートするAIを弁護士以外の者が提供することについてです。
 一例として、法務省は昨年、契約書の法的リスクを自動判定するAIが弁護士法に違反する可能性を否定できないという見解を公表しました。ただし、関係者の利益を損ねる恐れがないなど正当な業務の範囲内にあると認められる場合は、違法でない場合がありうることも示唆しています。
 この法務省の見解の曖昧さからもわかる通り、AIの急速な進歩に対し、弁護士法という伝統的な制度をどのように適用すればよいか十分には整理できていない状態です。もっとも、現在のAIがまだ「道具」の域を超えず、それを使用する「人」の影響が大きい以上、弁護士以外の者がAIという道具を有償で提供することには慎重にならざるを得ないでしょう。
 とはいえ、司法の世界にAIが様々な形で参入してくることは避けられません。2022年には、民事判決データベース化検討会という会議が法務省で設置されました。データベース化された大量の判決を取り込んだAIが、ドライブレコーダーの交通事故映像を読み取って過失割合を判定するなど、人の関与を必要としない「ロボット弁護士」の登場も近いのかもしれません。
 私は、これからAIが発展していく中で、生身の人間が良き競争相手となり、切磋琢磨しながら互いに成長していくことが、人とAIとの理想的な関係ではないかと考えています。いつか法廷に「ロボット弁護士」が立つのであれば、その相手として不足ない弁護士になりたいものです。

 
(2023年2月24日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)

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