長崎県弁護士会

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長崎県弁護士会 会員 樋口聡子

 

 あなたやあなたの大事な人が、身に覚えのない罪で犯罪者にされたらどうしますか?無実であるにもかかわらず、誤って有罪判決が確定した人を救済するための手段として、裁判のやり直しを求める「再審」制度があります。しかし、再審は「開かずの扉」、「ラクダが針の穴を通るより難しい」などと言われており、その道のりは困難を極めます。

 この困難さの原因には、法律の未整備の問題があります。刑事訴訟法の全507条の規定のうち、再審に関する条文は19条しかなく、具体的な手続についての規定はありません。そのため、再審請求審における審理の仕方が裁判所の裁量に委ねられており、担当した裁判所によって差が生じるいわゆる「再審格差」が生じています。

 再審を開始するには、無罪を言い渡すべき明白な証拠を新たに発見する必要があります。ところが、再審手続では証拠開示に関する条文がありません。再審請求手続にて、裁判所が検察に証拠開示を求め、検察がそれに応じたことで証拠が開示され、再審開始に繋がった事件も多々あります。しかし、条文がないため裁判所が開示を求めるとは限らず、裁判所が開示を求めたとしても、検察がそれに応じなければ証拠は出てきません。

 また、再審制度は、再審の開始を判断する再審請求手続と、有罪無罪を判断する再審公判手続との二段階構造となっています。日本の再審法のルーツであるドイツでは、再審請求を受けた裁判所が再検討を必要と考えたなら即座に事件を再検討すべきであること、再審開始決定により誤判を修正する価値が高くなっていることなどを理由として、半世紀前に再審開始決定に対する検察官の不服申立てを法で禁止しました。しかし、日本ではこの点の改正がなされておらず、再審開始決定に不服申立てがあれば、高裁、最高裁と再審を開始するかどうかについての審理が続いていくため、無実の罪の人の救済が、あまりにも長期化・困難化する事態となっています。

 つい先日、地裁に続き高裁でも再審開始決定が出た日野町事件においても、検察官が特別抗告を行ったため、さらなる長期化が懸念されます。

 このような事態を解決するため、日本弁護士連合会は再審法改正実現本部を設置し、再審請求手続における全面的な証拠開示の制度化や再審開始決定に対する検察官による不服申立ての禁止などの再審法改正を目指した活動をしています。

 長崎県弁護士会は3月20日午後5時より、大崎事件弁護団事務局長の鴨志田祐美弁護士と湖東病院事件で無罪判決が確定した冤罪被害者西山美香氏をお迎えし、長崎県勤労福祉会館及びZoomウェビナーにて再審法改正シンポジウム「無実の罪?えん罪被害者って何?」を開催します。一緒に再審法改正の必要性について考えませんか。

 

(2023年3月12日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)

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