長崎県弁護士会

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 日本国憲法は、本日、1947年(昭和22年)5月3日の施行から76周年を迎えました。日本は、先の大戦において、多数の一般市民の命が奪われる悲惨な戦争の惨禍を経験しました。その歴史を痛切に反省し、政府によって二度とこのような過ちが起こされることのないようにとの固い決意のもと、日本国憲法は、武力行使を禁じ(第9条第1項)、戦力不保持・交戦権否認を定め(同条第2項)、徹底した恒久平和主義をとっています。
 2022年(令和4年)2月、ロシア連邦がウクライナへの軍事侵攻を開始し、この戦争によって、兵士のみならず、何の罪もない多数の一般市民も命を奪われ続けており、すでに1年以上経過しています。武力により人々の命と暮らしを奪い、ウクライナの国土を焦土と化す、ロシア連邦の軍事侵攻は、絶対に許されないものです。当会は、これに厳しく抗議し、平和的解決の早期実現の努力を日本政府に求める会長談話を、2022年3月4日に発表しました。
 一方、政府は、2022年12月16日、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」のいわゆる安保三文書(以下「三文書」といいます。)の改定を閣議決定し、三文書において、「敵基地攻撃能力」または「反撃能力」を保有し活用していく方針を明記しました。敵基地攻撃能力(または反撃能力)とは、相手国の領域内にあるミサイル発射手段や指揮統制機能等を攻撃する能力です。
 敵基地攻撃能力の保有は、抑止力の強化につながり、ひいては、我が国の安全保障に資するとの考え方もありますが、抑止力論には、自国が抑止力を高めれば相手もさらに軍備を増強し、とめどない軍拡競争に陥るという限界があります。抑止力論のみに安易に依拠した安全保障の考え方は、将来の我が国や近隣諸国、そして全世界の緊張を高めるものです。
 悲惨な戦争が起きている今だからこそ、私たちには冷静な判断が必要です。当会は、日本国憲法のもと、基本的人権の擁護と社会正義の実現のため、これまでも様々な法的サービス・情報を提供し、また、日本国憲法に抵触するおそれのある政策等に対して意見を表明してきました。当会は、引き続き日本国憲法の基本理念が堅持され、人権が十分に保障される社会を目指して、努力を重ねていきたいと思います。

 

2023年(令和5年)5月3日

長崎県弁護士会    
会長 山 下  肇