長崎県弁護士会

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長崎県弁護士会 会員 今井一成

 

 特定商取引法を知っていますか。
 この法律は、訪問販売や電話セールス、通信販売、マルチ商法等の消費者トラブルが類型的に多い取引を規制する消費者保護法です。事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的としています。
 一定の期間であれば、契約を再考し、無条件で契約申込みの撤回、契約解除ができる、いわゆるクーリング・オフを認めているのもこの法律です。
 同法は、年々拡大する消費者被害を踏まえ、何度も改正されており、2016年改正の際には施行5年後の見直しが盛り込まれました。改正法施行は2017年12月1日ですから、すでに5年が経過しており、さらなる改正が見込まれています。
 この間に消費者を取り巻く環境が大きく好転することはなく、高齢者の消費者被害は依然として多いうえ、成年年齢18歳引下げに伴う若年成人の消費者被害も懸念されます。また、インターネット通販の利用急増に伴い、これに起因する消費者被害も右肩上がりです。このような状況に対応するためには特定商取引法の抜本的な改正不可欠です。
 そこで、長崎県弁護士会は国に対し、同法の抜本的改正を求める意見書を提出しました。意見書の内容は多岐にわたるため3点だけ紹介します。
 一つ目は、訪問販売・電話セールスの事前拒否制度の導入です。自宅への訪問販売や電話セールスは多くの消費者にとって迷惑であるばかりか、不意打ち的な勧誘により消費者が不本意な契約をしてしまうことが少なくありません。そこで、「訪問販売お断りステッカー」を自宅門戸に貼った消費者への訪問販売の禁止、登録機関に登録された電話番号へのセールス電話の禁止を提言しています。
 二つ目は、インターネット通販におけるクーリング・オフ制度の導入です。現行の特定商取引法は訪問販売や電話セールス等につきクーリング・オフを認める一方、通信販売には認めていません。通信販売では、自らウェブサイトを閲覧して申込みを行うといった、自主的かつ自由な意思に基づく取引形態が想定されているためです。ところが、インターネット通販においてチャットやSNSメッセージ機能を用いた勧誘が散見されるようになり、消費者の自主的な選択が害されています。このような取引形態の変化に対応するため、インターネット通販にもクーリング・オフを認めることを提言しています。
 三つ目は、マルチ商法への規制強化です。マルチ商法は、商品・サービスを契約して、次は自分がその組織の勧誘者となって紹介料報酬等を得る商法です。現行の特定商取引法もマルチ商法を規制していますが、悪質なマルチ商法被害は後を絶ちません。近時、友人を介した若年成人の被害が目立ちます。そこで、国による事前審査を経なければマルチ商法を営んではならないとする開業規制の導入、若年成人等を対象とするマルチ勧誘の禁止等を提言しています。
 私たち消費者にとって身近な問題です。ぜひ注目してください。

 

(2023年6月25日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)

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