長崎県弁護士会

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 政府は、2012年(平成24年)6月16日、関西電力大飯原子力発電所3号機及び4号機の再稼働を認める決定をし、関西電力は、同年7月1日、同発電所3号機を再稼働させ、同月21日、同発電所4号機についても、発電と送電を再開させた。

 

 2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故(以下「福島原発事故」という。)は、それまでの安全設計審査指針や耐震設計審査指針等の安全基準に不備があったことを明らかにするとともに、ひとたび原子力発電所の事故が発生したときには、広範囲の人々に対し、長期間にわたり、極めて深刻な被害を及ぼすことを明らかにした。この福島原発事故は、長年原子力発電は安全であると公言していた政府及び電力会社の言う安全神話を完全に崩壊させたものである。今後も、特に、大人よりも放射線の影響が大きいと言われる子どもたちの体内被曝による健康被害が懸念されているところである。

 原子力発電所事故被害の再発を未然に防止し、福島原発事故のような原発事故を二度と繰り返さないためには、先ず第一に、福島原発事故の原因を解明することが必要である。そして、その事故原因を踏まえた、確実に安全性が確保される新しい安全設計審査指針等を策定し、かかる新しい安全基準に則った厳格かつ慎重な審査に基づかない限り、再稼働を認めるべきではない。

 しかし、福島原発事故の原因の解明はなお不十分なままであり、また、事故原因を踏まえた安全審査指針等の改定が行われていないのが現状である。

 このような状況であるにも拘わらず、政府は、暫定的な安全基準をもって、大飯原子力発電所3号機及び4号機の再稼働を決定した。しかしながら、この暫定的な安全基準による再稼働の決定は、福島原発事故の教訓を無視するものであり、また原子力発電への徹底した安全性を求める幅広い国民の声をも無視するものである。政府の対応は、原子力発電所周辺住民の生命・身体の安全を軽視した、極めて不適切なものである。

 被爆地長崎では、1945年(昭和20年)8月9日に投下された原子爆弾による放射線により、多数の市民が病気となり苦しみ死に至った。原爆投下から67年を経過した現在においても、多数の人々が、原子爆弾による放射線被害により苦しんでいる。原子力発電所事故による被害も、原子爆弾による被害も、どちらも同じ放射線によるものであり、人々に深刻な生命・身体への被害を及ぼすものである。

 当会は、被爆地長崎の弁護士会として、二度と放射線による被害を繰り返されないことを心から願うものであり、福島原発事故の教訓を無視し、国民の生命・身体の安全を軽視する大飯原子力発電所3号機及び4号機の再稼働に対し、強く抗議する。

 

2012年(平成24年)8月9日

長崎県弁護士会
会長 戸田 久嗣